f:id:kawati:20080216034340j:image:right書いてそのまま忘れていました。
枯水生活四日目。サブタイ:我が身は仙人のごとく
家の水は相変わらずでないが、家をでてぐるりと回りこんだところにある水道は生きているため、そこまで寝ぼけた頭で行って顔を洗い、風呂に湯を張ったことがなかったため完全にオブジェと化していた洗面器を持ち出してきて水を張る。フィンガーボウル的な役割を任せるのだ。もさもさとその過程をこなす僕は陳腐なドラマの1シーンを彩っているかのようであった。
百円で買った水で歯を磨き、無意識に蛇口をひねり首を傾げる。これは文明が僕に愛想をつかした証拠なのだ。
昨日友人の家に押し入って風呂を借りたが、疑問に思うこともある。確か二年前は四、五日程度なら風呂など入らなくても何の痛痒も感じなかったはずなのに、今では一日あけるとどうもむずむずしてくる。どうも原因が思い当たらない。もしかして記憶だけ引き継いだ別の体だったりするのだろうか。不思議とそう考えると納得がいく。冬を暖房なしでも過ごせた強さは崩壊し、賞味期限に慎重だった自分は過去の人となった。目が良くなったり羽が生えたり電磁波飛ばせるようになったりしないかな。




所用で秋葉原に行って同行の知人が一言「そうだメイド喫茶行こう」。
「……は?」
メイド喫茶。俺行ったことなかったから行ってみたかったんだよねー。せっかくだし、ほら、一度くらい」
「いや……いやいやいや待て待て待て、よく考えても見ろ何でメイド喫茶!? 落ち着けあそこは、あそこには理想郷などそんざ」
「やー楽しみだなあどんなところだろう」
最早拒絶の権限は既に取っ払われていた。引きずられるようにして「お帰りなさいませご主人様ー」の声に呼び込まれる。もう……やめて……。
内装は狭い割にちっこいステージなどがありましたが、思ったより普通でした。フィギュアや漫画が棚の寂しさをごまかすかのごとく陳列されているのを見ると、近所のメシ屋を思い出します。
帰宅料金なるシステムがあることに瞠目しつつ、注文したシロモノがメイドの手によって届けられ、ああ、これでこんな高いのかまあいいやいただk
「それでですねー」
はい?
「こちらに私から愛を込めさせてもらおうと思います」
「……そうですか」
(省略)
僕のエスプレッソとパフェに愛が込められた後メイドは去り、僕は一言知人に言いました。
「不思議だ。脂汗が……」
知人爆笑。
「お前……」
爆笑。
「小心すぎる」
爆笑。
一通り笑い終えた知人は満足したらしく、メイドの新人研修の大変さに思いを巡らせていました。
一通り笑われ終えた僕は満足以前の問題でしたが、狭い店内と一体感の関係について思いを巡らせていました。
のろのろとパフェを食べつつ、こんなはずでは、と繰り返し自分に言い聞かせます。僕が行きたかった場所はこんなところではない。秋葉原らしいと言えばらしいけど、違うんだ。僕は、そう、秋葉原に来たからには有料トイレにいきたかった。知人にも言った。強くその旨を言った。
「トイレ? どうでもいい」
一蹴された結果がこれだ。これだとか考えているうちにイベントが始まります。出る機会を逃した。じゃんけん大会、名前忘れたけどメイド集団によるユニットのライブ。
華やかに、きゃぴきゃぴという形容詞が似合いそうな雰囲気で進行し、洗脳の意図があってもおかしくないほどの躊躇なき大音量で歌と音楽を叩きつけ、僕はただぎゅっと自分の中の暗き部分さえも拭いとられないように抱きしめるのが精一杯なのでした。


あ、帰ったら水は直ってました。ぼろぼろになった僕を迎える文明の道しるべが今はただ輝かしい。

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