f:id:kawati:20071213015401j:image:rightいつものように一人でぶらぶらと電車に乗り、そのまま国立新美術館に行ってきました。『フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展』。サイトの来場何十万人突破というのを見て、もう満員電車の美術展かと思うほどの混雑を予期していたのですがさすがは平日、予想ほどでもなく、息をつく空間くらいはありました。最初は入ってうわー混んでるなー……ってこれ売店じゃねえかよ! とノリツッコミをしていたのですが、展示は絵の前はまだしも、全体的にはそうでもなかったです。
正直フェルメール作品よりもコルネーリス・デュサルトの連作「12ヵ月」が面白かったです。2月のサーカスの練習のような風景とか、11月の豚(イノシシかも)の血を絞りとってるやつとか。フェルメールフェルメールでやけに研究されていました。頭の後ろに絵画か地図を描いたけど消しただの、洗濯籠だったものがバランスを崩すからか足温器に変えられていただの、小さく穴を空けて遠近法を図っていたけど机の大きさは正しくないだの。まるで国語の教科書の解説だ。文章で言えば誤字ありの初版本持ち出してきて、ここの誤字はこのように書こうとしていたが表現を変えたとか、一見不必要に見えるこの描写によって文章全体がまろやかになったとか、そういうことだ。わけのわからない言いかえをしたのは気にしないでください。多分くせです。
美術に対する素養がないなりの視点で、葉書大の版画にちいせぇーなーとしょうもない感心をしていたのですが、そのどうしようもない目を大いに喜ばせてくれたのはオウムガイ杯でした。宝石のような白さを保ちつつも、虹色の静謐な光沢で魅せる大きなオウムガイが金の華麗なる装飾に支えられて杯としての形をなしています。実用性という点ではおそらくクソみたいな代物ですが、あれぞ秘法と呼ぶに相応しい。ほら、あれだよ、海の王女を助けて海王とかがくれたりするんだよ。でもそれが主人公にとってあまりに身分分相応な代物だから領主の嫉妬を買って、闇討ちにあうんです。主人公もはいどうぞと渡せるようなものでもないから、必死にオウムガイ杯を持って逃げるんです。でも逃げているうちに虹色の光沢を持つオウムガイに魅せられて主人公は変調をきたし始め……。そんな話が脳裏に浮かんできますね。
そして全ての展示を見終えて、わー素晴らしかったーと出た瞬間に待ち受ける売店。なんという効率的な罠。無駄にポストカード4枚買ってしまった。