ちょうど出かけようとして、自転車をとりにきたら見知らぬおっちゃんと猫がいて、思わず話し込む。
「この子は飼い猫だからか怖がりでねー。わたしが一緒に来んと散歩にも出られんのですよ」
「そりゃまた難儀なことで」
「でもその代わり人には慣れてて全然警戒しよらんのです」
「……確かに逃げませんね。触っても大丈夫ですか」
「大丈夫ですよ」
まさかこんな近所で猫さんと触れ合える機会が与えられるとは思わず、すごくどきどきしながら傍に寄るも我関せずの猫。恐る恐る触れてみるも相変わらず無関心のご様子。「か、かわいい……」横に見知らぬおっちゃんがいるのに思わず呟く僕。その整った顔立ちで一瞬だけ僕を見る目は左がやや白みがかっている。
「左目、見えないんですか」
「ええ、昔から見えないみたいで」
猫はその動きに不自由さと危うさを欠片も見せずに優雅に歩き回り、階段の手すりに体を擦り付ける姿を眺めて、お互いにお別れ。さよなら眇目の猫さん。お元気で。

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